メタバースで茶道(VRC茶道部)

メタバース(VRChat)という先進的な環境において、日本の伝統文化の一つである茶道を再現し、リアルでも茶道経験のある方々ばかりでなく、未体験の方々も交えた、文化交流を主催し、茶道の普及に取り組んでおられるVRC茶道部主催のyokofさんにお話を伺ってみます。

yokofさんは、合気道参段、茶道歴数十年の麗しい女性で、メタバース空間において茶道・合気道・着物を中心に日本文化の普及に尽力されています。

yokof:VRC茶道部部長
Masa(まさ):NPO法人VXLink理事長

yokof ごきげんいかがでいらっしゃいますか。VRC茶道部部長のyokofと申します。今日は、よろしくお願いいたします。

Masa(まさ) こちらこそ、いつもお世話になっております。本日は、よろしくお願いします。

さっそくなのですが、まず初めにVRC茶道部とはどのような活動をしているのかお聞かせいただけますでしょうか。

yokof VRC茶道部は、月1回のどなたでも参加できる公開茶会と、それに向けてのVRC茶道部のグループインスタンスで行われる月2~3回の稽古会からなります。

 軸、棗、茶碗といった、お道具は毎月月釜のたびに新しくあつらえています。このお道具たちはVRC茶道部のDiscord内で、毎月皆で話し合いながら決めています。

 茶会にはストーリーがありますので、そのストーリーを感じて頂ける道具組を工夫しています。 

Masa(まさ) 毎月、みなさんで相談して、その時々の茶会に使用するお道具を決め、さらにそれを手分けして作成されているわけですね。軸の書も、毎月違う方にお願いして書いていただいているとお聞きしております。本当に手間をかけてのご苦労がうかがえます。

 そんな毎月、大変な手間を掛けておられるVRC茶道部ですが、活動を始められたのはいつ頃なのでしょうか。

yokof VRC茶道部は2023年元旦に正式発足いたしました。2022年12月末に行った発足前茶会から始まり、2023年6月時点でVRC茶道部を発足して半年超になります。

VRC茶道部 新年会 兼 発足記念集会

Masa(まさ) 発足前茶会で始まり、もうすぐ半年になるわけですね。その2022年の暮れですが、VRC茶道部発足前茶会に至るきっかけとなったのは、どのようなことなのでしょうか。

yokof VRC茶道部、現副部長で剣舞師のjenaraが茶室ワールドをつくり、同じく副部長でVRC剣術研究会会長の桜庭なつが「茶道してみたい」と言い、部長のyokofが「私、茶道歴長いですよ。やりましょう」といってトントン拍子に発足が決まりました。

Masa(まさ) みなさんのタイミングが合った感じなのですね。それでトントン拍子で進んだと。

しかし、タイミングだけではなく、みなさんの意欲と能力があってのことですね。

そのような三名からのスタートだということですが、その人数だけでは、先ほどのような手間のかかる活動を続けることは難しいと思います。そのための協力者を集めるにあたって、どのような方針や思いなどがあったのかお聞かせいただけますか。

yokof VRC茶道部は興味を持ってくださった方、みんなで創っていきたいとの想いがあります。茶道に興味がある方はどなたでも歓迎しています。未経験者も様々な流派の茶人も海外の方もどなたさまもです。

VRC茶道部の活動としては、少しでも多くの方に茶道部内や茶会で役割をつくり、積極的に「自分も茶道部を創っている一員なんだ」と思って頂ければという気持ちで、毎回の茶会等の役割を決めています。茶会の役割は挙手制で、挙手のなかった役割は部長がヘッドハンティングしています。創部から半年がたち、経験の浅い方でもお点前が茶会でできるようにと特別稽古会を行ったりして、皆ができることを一つずつ増やしていっています。

Masa(まさ) 未経験者や海外の方々もなのですね。これによって、リアルの茶道人口増加にも、きっと貢献できますね。また、それらの方針に従って、以前私も茶会の正客を拝命させていただいたわけですね。納得いたしました。

このみなさんで作り上げる茶会ですが、そのような茶会を開くにあたってのご苦労は多いかとおもいますが、特にどのようなものがございますか。

yokof 茶会は、毎回2インスタンス(二席)を建てているので、2インスタンスともどのくらいお客様が来てくださるかは気になるところです。ですがそもそも正式な茶会はお客様の数が1人~多くて5人ですので、お客様の数が多くても少なくても精一杯のおもてなしをさせて頂いています。ちなみに『大寄せ』と呼ばれるカジュアルな茶会は、ひと席に30人~150人くらい入ることもあります。

また、茶会の役割決めに偏りが出ないようにしたり、初心者とベテランをうまく混ぜたりするところのバランスにも気を付けています。

そして毎月の道具組も茶道部の皆で考えて、お客様にテーマやストーリーを感じて楽しんで頂けるようにと心をくだいています。

Masa(まさ) どのようなイベントも、気苦労が多いものですが、茶会の場合は事前準備の方々の他に亭主、お点前、お運び、正客、次客から末客までと役割が多いですので、その方々の配役を毎回調整するのは、本当に大変だと思います。

VRC茶道部の活動も始めて半年を迎え、だいぶ安定してきたのではないかと思いますが、今後の活動では、こうしていきたいという思いなどございますか。

yokof 毎月1回の茶会と月2~3回の稽古会というペースは保ったまま、活動の幅を広げていきたいですね。2023年夏には『メタバース伝統文化部』という名前で茶道・華道・書道・剣術・剣舞の方々と本を出す予定があります。

メタバース伝統文化部では、リアルで文化イベントなどもしたいねと話したりもしています。今以上に、リアルとバーチャルをつないでいく役目を果たして参りたいと存じます。 

Masa(まさ) 本を出版されるのですか。ぜひ、拝見させていただきたいと思います。

メタバース伝統文化部は、メタバースからリアルに飛び出し、両者をつなぐ役割を担うのですね。

これからそれを実現するにあたって、課題などはございますか。

yokof バーチャルをリアルに持ち込みたくない、という方ももちろんいらっしゃいます。無理に両者をつなげるものではありません。ただ、yokof個人としては「リアルもバーチャルも変わらない現実」という気持ちがあり、どちらも大切な世界です。yokof個人としましては、幸いリアルとバーチャルが融合した運用ですので、リアルとバーチャルの架け橋となれるかと存じます。実際に茶道に関してはyokofの所属する茶道裏千家総本部にもバーチャルでの活動報告書を提出していますし、他流の宗家や本部にも活動報告を行ってくださる部員もいます。VRC茶道部は流派の垣根を超えた活動ですので、そのような形を取らせて頂いています。 

Masa(まさ) 「リアルもバーチャルも変わらない現実」でどちらも大切、その通りですね。私もそう思っております。特にリアルがかかわる場合、様々な手続きや契約などを経る必要があり、非常に煩雑ですよね。

それでは、最後に今後のイベントの予定などを告知いただけますか。

yokof 今後も毎月1回の公開茶会と月2~3回の稽古会を開催して参りますので、ぜひVRC茶道部のVRCグループやDiscordに入って一緒に活動して参りましょう!

公式Twitterもございますので、茶会の情報などはそちらからもフォローできます。

今後、オフでのイベントも企画するかもしれません。ご一緒できる方はぜひご一緒いたしましょう!

※VRC茶道部へのご連絡、あるいは参加は、下記の連絡先からお願いします。

【Twitter】 https://twitter.com/VRC_Chado

【Discord】 https://discord.gg/26qXdVZXR9

【VRCグループ】 https://vrc.group/VRCTC.3098

Masa(まさ) ありがとうございます。

メタバース空間(VRChat)を使って、日本文化を普及させる取り組み、非常に興味深くお聞かせいただきました。

私もVRC茶道部へ参加させていただいておりますが、痛感するのはバーチャルでは、リアルと同じことができない場合が多いということですね。バーチャルでは、自然法則がそもそも成り立っていないわけで、そこをうまく、いい意味でごまかしながら妥協点を見つけていく活動でもあると思います。

また、VRC茶道部の床の間にある花器やお花は、リアルで生けたものをLiDARなどで3Dモデル化し、バーチャルへ持ち込むということをされています。掛け軸の書も同じくリアルからバーチャルへの持ち込みですね。私は過去、リアルで抹茶碗を作っておりましたので、これを3D化してバーチャルへ持ち込むことにトライし始めています。そういうリアルとバーチャルの双方向性は、今後もっと進むと思っております。

VRC茶道部は、バーチャルで茶会を催すための試行錯誤が、今後も続いていくものと思います。新しい取り組みには難しい問題も多いでしょうが、みなさんのチャレンジ精神で乗り越え、ぜひ茶道の普及に貢献ください。

本日は、本当にありがとうございました。