『Meet XR 2023関西』の余韻

記者:ZEE(ゼ)1231、Masa(まさ)

Meet XR、昨年は東京で参加しましたが、今回2023年5月30日(火)に会場であるグランキューブ大阪を訪問し取材させていただきました。

Meet XR とはXR/メタバースのビジネス活用に関心のある企業・投資家等を対象に、企業の体験展示ならびにビジネスマッチングの機会を提供する目的で開催されているイベントで、2017年頃から年2回のペースで東京と大阪で開催されています。

今回の「Meet XR 2023 関西」は、出展ブースは27あり、XR関連企業の他、一般社団法人から近畿経済産業局まで多様な事例の出展が見られました。

その中でも興味深い展示を行っていたブースを、いくつか私見を交えてご紹介します。

■ヤマハ株式会社

こちらヤマハ株式会社では、立体音響の開発環境として2022/4から発売中のSoundXRを展開されていました。

音場の体感がステレオの左右だけでなく、上下や前後も聞き分けることができるというものです。利用には、ヘッドホン環境が必要になるそうで、Quest2などのHMD内臓スピーカーでは無理だとのことです、残念。

提供されるのは、Unityなどの開発用プラグインであり、Unityの場合2020,2021で利用可能とのことです。

今回は、さらにモバイル版(android版)を用意されているそうです。

SoundXRは、主に法人向けを想定している商品であり、個人での利用は難しそうですね。

こちらの商品、出展者側の評価してもらいたいとの強い思いから、ぜひHPにある体験版を申し込んでほしいとのことでした。

■株式会社ホロラボ

Assistsという、ホロレンズを装着して動作をレコーディングし、それを3Dマニュアルとして再現させるシステムを展示していました。基本機能でコンテンツを量産するというより、個別に3Dモデルなども作りこんで体感型のマニュアルとするなど、工数や工程をかけてのコンテンツ作りになってくると思われました。

次にtorinomeという商品。これは国土交通省が主導するPLATEAUのデータをベースに他のGISデータや点群データ、写真などを関係づける、インストール不要なWebベースデジタルツイン基盤システムとなっています。

ちなみにtorinomeは、そのまま日本語の鳥の目だと思っていましたが、イタリア語?のトライノームだそうで、でも結局意味は鳥の目のようです。

こちらもそのままのアプリを利用することも可能ですが、利用環境・目的に特化した追加開発をすることで、価値が大幅に上昇するタイプのシステムと思われました。

■株式会社アストネス

TalkSkillsという対話スキル・対人コミュニケーションのトレーニングアプリを展示していました。

これは音声認識、音声合成をGPT-4と組み合わせたもので、ZEE(ゼ)1231が体験したのは営業シーンの練習です。AI(GPT-4)が商談相手であり、フライパン販売担当者といった場面を体験しました。こちらからフライパンの強みや特徴を伝えると、それに対しての鋭い視点の質問が返ってきました。実在する人と話しているような感覚になり、とても不思議な感じでした。また、相手の目を見ているかどうかもパーセンテージで表示されており、一人で行う練習にはとても有効と思えました。

Masa(まさ)も同様に、自動車メーカーに対する設計支援システムのSI営業という設定で体験しました。事前に対象顧客や商品概要などをGPT-4へのプロンプトとしてインプットしてから始めるのですが、あまりにもGPT-4に事前情報が入っていないため、まるで飛び込み営業に対する受け答えのような場面になり、かなり戸惑いがありました。

このシステムは、開発から約2か月ほどで作成したプロトタイプのようですが、有効に利用するには、もっと事前のプロンプト入力が重要と思えました。

担当していたのは、アルバイトの関東の大学院生でした。アストネスはVR機器のレンタルから始まった会社らしく、現在もそれが主なビジネスとのことです。

■近畿経済産業局

ここでは関連団体として、2社が展示を行っていました。

・株式会社栗本鐵工所

磁気粘性体SoftMRFを応用した、体感デバイスであるサワレルを体験してきました。指でレバーを押す際の強さなどを磁気粘性体で加減して、バーチャルな世界での触角を再現させるデバイスとして提案されていました。

サワレルは指1本の体感デバイスですが、全身の関節に展開することで、逆パワードスーツ的な面白いものもできそうです。

・鯖江商工会議所

こちらの出店は、バーチャルモールJというものです。

鯖江の商工会議所が運営しているバーチャルモールですが、全国の商工会議所を巻き込んだ全国展開を目指しています。

現状では2Dのバーチャルモールに、少しだけVR感を追加したものになっていますが、ここからどうメタバース空間として発展できるのか期待したいところです。

■Pico Technology Japan株式会社

言わずと知れたHMDのデバイスメーカーですが、特にエンタープライズ向けの管理機能が特徴と思えました。イベントや会社などで複数台のデバイスを管理する管理者としては、それらの管理機能は非常にありがたいものと想像されます。

デバイスの機能・性能に関しては、現在非常に競争の激しい領域となっており、次々と新しい機種を出し続けることが肝要と思われます。
引き続き、期待したいですね。

■株式会社NTTドコモ

XR Remote Renderingを紹介していました。

クライド側でGPUを動かし、メタバースに接続する人は既に数名見掛けていますが、このドコモのサービスでは一連の流れをサービス化し提供するものになっています。

クラウド側は、AWS,GCP,Azureの他にdocomoMECを提供することでクローズドな環境も提供できるとしています。

低遅延ということで、ドコモが提供する5G無線のルーターが必要なのかと思ったのですが、利用者側は通常の光回線などで問題ないとのことでした。
現在は、個人で利用できる感じではありませんでしたが、各家庭でも利用できるようになると、ゲーミングPCの排熱問題も軽減されそうですね。

■株式会社Mogura

Mogura NEXTという、AR/VR/メタバース/アバター(VTuber含む)領域に特化した、リサーチ・コンサルティング・開発サービスを紹介していました。

また、デンソーとは以前より、共同でARシステムに取り組んできており、今後一般への提供を視野に商品名なども検討中であるとのことでした。

■株式会社x garden

ARでその場に試し置き!やバーチャル店舗をお手軽に開設!のサービスを展示していました。

初期導入費無料、月額料金もIT補助金で半額になるなど、導入しやすさを強調しています。メタバースである理由が若干弱いですが、いずれは家具や大物家電など、すべての購入がこういったARで検討されるようになっていくのでしょうね。

■株式会社デジタル・スタンダード

TDPTというマーカーレスのフルボディトラッキングシステムを展示していました。カメラからの入力で体の24の検出ポイントを3次元の座標で出力することができるそうです。

実際に体験させていただきましたが、1台のカメラでトラッキングするので、死角が大きく、利用場面が限定されるかと思いました。ただし、Windows版・SDK for Unity・iOS版といったSDKを提供していることから、医療分野など様々な領域での個別開発が可能となっており、今後の利用拡大が期待されます。また、VRChatやclusterでも利用することは可能だそうですが、正式対応はしていないそうです。こちらも今後に期待です。

以上、全展示のご紹介はできませんでしたが、MeetXR2023関西の雰囲気を部分的にでもお楽しみいただけましたら幸いです。