世界初!VR即興演劇集団【白紙座】 主宰めどうさんに独占インタビュー

記事:maropi

インプロヴィゼーション、通称インプロのことを皆さんご存じでしょうか?

脚本も打ち合わせもない中で、その場で起こったことに目を向けながら共演者や観客と共にストーリーを生み出していく、予測不能でエキサイティングな即興演劇です。

日本ではまだ認知度が低いインプロ演劇ですが、海外では非常にポピュラーな演劇ショーの一つでもあります。

VR公演は世界初!白紙座とは?

『白紙座』は主宰のめどうさんと指導役のせびるさんの二人によって設立された、バーチャル空間上でインプロ演劇を行う集団です。メンバーは週に一度、バーチャル空間上に作成された稽古場でインプロについて学び、月に一度開催しているインプロショーに向けてスキルアップを行っています。

白紙座では「インプロの父」とも呼ばれるキース・ジョンストン氏(Keith Johnstone)が考案した様々なインプロショーの中でもMaestro Impro™(マエストロ インプロ)という形式を採用しています。

10人前後のプレイヤーと2人のディレクターによるショーで、ディレクターに選ばれたプレイヤーが与えられたお題に沿って即興で演じ、その演技に対し、観客が採点するといったもの。最終的に最も高評価を得たプレイヤーがマエストロ(優勝)となる観客参加型のショーです。

このMaestro Impro™、実はライセンス式になっていて国際団体からライセンスを取得しなければ、この形式を用いた公演をすることができません。 しかもなんとVRで公演する団体のライセンス取得は白紙座が世界初

今回は即興演劇をVR…つまり仮想現実空間の舞台で行う団体「白紙座」の主催 めどうさんに設立の経緯など詳しく伺ってみました。

めどう (TwitterID:@meadow_vr) 

――めどうさんは白紙座を立ち上げるまで、どのような活動をされていたのですか?

めどう

元々VRに興味があり、clusterやVRChatで行われている有志の音楽ライブや演劇公演等を鑑賞するうちに、次第に自分でもイベントを作る側になりたいと思い、イベントのスタッフや主催などをするようになりました。

そうした活動と合わせて、1年前からバーチャルYouTuberとしてVRの魅力を伝える配信をしています。

白紙座のメンバーの中には、これらの活動で知り合った方々も在籍しています。

演技に関しては以前から勉強していて、今でもスクールに通っています。

VR空間でも、今まで学んできた声の演技のスキルを何かに活かせないかと思っていましたが、なかなか役者として表に出る機会が得られず、実はちょっと落ち込んでいた時期もありました。

――そうした中で、どういう経緯で白紙座を立ち上げることになったのでしょうか?

めどう

きっかけはVRChat内の交流会で、現在白紙座の指導役を担当しているせびるさんにお会いしたことでした。

「VRでもやってみたいよね」「じゃあ是非やりましょう!」と意気投合し、VR空間でもインプロやお芝居に興味のある人を募って白紙座を立ち上げました。

立てる舞台が無いなら自分で作ればいいじゃないか、というのは以前から思っていたことなので、この話はまさに渡りに船でした。

また、僕と同じくVRで演劇がしたいけど機会がない」という思いを抱える人は結構いたみたいで、思っていた以上にメンバーもスムーズに集まりました。

――これまでに7回の公演を行なって来た反響・手応えはいかがですか?

めどう

想像以上に温かい反応を頂いています。

集客は正直不安だったのですが、出演者の皆さんが一生懸命に宣伝してくれるおかげで、満席に近いほどのお客様にご来場頂いています。

毎回楽しみにしていると言ってくださる方もいて、やってよかったなぁと思っています。

また、白紙座で上演している「マエストロ」という形式は、10人前後の出演者が必要なので人数が揃うかも心配だったのですが、こちらも有難いことに問題なく開催できています。

出演者からも「楽しかった」と言っていただけているので、VRで演劇がしたい人に機会を提供する、という目的は達成できているのかなと思っています。

――お客さん、役者さん両方から良い反響があるのはうれしいですね!白紙座の「インプロ」公演は、VR演劇の他団体とは違った形式をとっていますが、「インプロ」の良さはどんなところにあると思いますか?

めどう

役者と観客の距離が近いところかな、と。

お客様にシーンを採点してもらったり、お題を募って一緒にシチュエーションを決めたり…コミュニケーションの機会が多いです。

一緒に舞台を作っている感覚はインプロならではだと思います。

あとは、個性のぶつかり合いが見られるところですね。VRの活動者は基本的にキャラクターが濃く、インプロはその個性がよく表れるので非常に面白いです。

毎回、公演が始まる前に「推しを見つけてください!」とお伝えしているのは、役者それぞれの個性を含めて楽しんでほしいからです。

――個性のぶつかり合いは確かにVRの活動者との相性よさそうですね!インプロをVR空間で行うからこそのメリットはどこにあると思いますか?

めどう

とにかく、場所と時間の制約が無くなるのが素晴らしいです

場所をおさえなくていい。地理的に離れていても問題ない。終電を気にしなくて良い。

稽古や公演を計画する上でこんなに便利なことはないです。

あとは流入のしやすさもあります。観るだけならPC・スマホさえあれば十分なので、実際に小劇場に足を運んでもらうよりは気軽ですし、SNSで効率的に宣伝ができます。 直接顔を見せなくて良いことや、声を出さなくて良いということも心理的なハードルを下げる要因になっていると思います。

――観客と役者の両方にとって良い面があるということですね。逆にVRだと難しいこと、課題はありますか?

めどう

バーチャル空間は簡単に集まれると言いましたが、それは機材・通信環境が揃っていることが前提なので、やはりそこのハードルは高いと思います。

技術面でいうと、通信環境の遅延の問題は常にあります。

会話のテンポの合わせづらさや、動きがズレたりすること。また距離感を掴みづらかったり、直接身体に触れられなかったりといった課題もあり、自然に見せるためには慣れが必要です。

そして、小物を使用することがバーチャル空間だと結構難しいです。

現実では簡単な「紙に文字を書く」「物を投げる」「帽子を被る・脱がす」といったことも、VRで実現するには工夫がいるため、現実の空間で行えることと同じことをしたいと考えても、なかなか難しく、改善するのが大変だったりします。

これは現在VRChat等のVRSNS環境を使用したイベント全般に言えることなのですが、収益を得るのが難しいです。 プラットフォームの規約上、チケットを売ることが難しく、現状で収益を得るにはファンサイトの有料会員、スーパーチャット、Boothでグッズを売るなど、外部サービスに頼るしかないのが現状です。一応、clusterにはギフト機能がありますが、いずれにしても現実で公演を行うよりも安定した収益を見込むのは難しく、VR演劇自体の認知度自体も未だ低い為、興行的な成功を収めようとするには、現実よりずっとハードルが高いと感じています。

――やはり収益の部分ではVRのイベントはまだまだ課題が多そうですね。それ以外にも難しさはあるようですが、これからの飛躍が楽しみになります今後、白紙座はどんな活動を広げていきたいと考えていますか?

めどう

「VRで演技ができる機会を作る」「VR演劇を広める」という目的のために、今後も毎月1回の公演は続けていきたいです。

その中で、四季に沿ったお題やVRならではの企画・ゲストなど、もっとお客様に楽しんでいただけるような工夫をメンバーみんなで考えています。

(2023/7/26撮影 VRChatにて 第7回 白紙座VR公演)

めどう

あとは、ワークショップもやってみたいです。

もともとインプロは学校や企業のレクリエーション・研修としても活用されているので、ワークショップを通じてVR内でのコミュニケーションがしやすくなるようなお手伝いをしたり、演劇人口を増やしていったりできたらいいなと思います。

いずれはバーチャルと現実の垣根を超えて、現実でインプロに取り組む団体と一緒に公演したり、現実の会場を使用したイベントを開催して、VRという存在を知らない人達が初めてVRに触れるきっかけになれたら嬉しいです。

――公演以外の活動もされていくとのことで今後の活躍に期待しています!めどうさん、ありがとうございました!

白紙座は、VRChatやClusterといったVRSNSのプラットフォームにて公演を行っています。VR機材がなくてもClusterはスマートフォンやPC、VRChatはPCで観劇ができます。是非一度、VRインプロ公演をご観劇ください。