青色の向こう #14(メタバース連載小説)

『水色』

あっという間に二ヶ月が過ぎた。
この頃には大学の前期も終わり、試験が始まっていた。
しかし、相変わらず午後8時にTMRWにログインしエーラと会い、夜中まで過ごす生活を送っていた。

「今前期の試験中なんだ」

「そう。試験がんばってね」

何も変わらない。
試験中だろうとエーラと過ごす時間が優先された。

僕は寝不足も相まって試験の成績はボロボロだった。
何とか単位を落とさずに済んだのは奇跡に近かった。
僕は「このままじゃいけない」と思うようになり、「努力」の方法を変えることにした。

「エーラ。話があるんだ」

「何?」

穏やかな海の見える夜の浜辺のワールドで僕は切り出した。

「試験が終わったよ。何とか単位を落とさずに済んだよ」

「そうなんだ。良かったわね」

「ただ成績は下の下でギリギリだったと思う。」

「そうなの?」

エーラは、何か問題でもあるの?という言い方で僕の方をじっと見つめた。

「それでね、話というのは勉強の時間を作りたいということなんだ。このままだと後期の試験も同じかそれ以下になってしまうと思う。そうすると留年の可能性も出てくる。それだけは避けたいんだ」

「・・・つまり私と会う時間を減らしたいって事ね」

「いや、そういうつもりじゃないんだ。ただ勉強する時間を作りたいだけなんだ。もちろんエーラと会うための時間は努力して作るつもりだよ」

「だから要するに私と会う時間を減らして勉強の時間を作りたいんでしょ?だったら最初からそう言ってよ・・・。」

エーラは悲しみとも怒りともとれる言い方で僕に詰め寄ってきた。

僕はもう何とも言えない状況に追い込まれた。エーラは

「今までのあなたの努力は何だったの?一緒にいられるって信じてたのに・・・」

僕は耐えられずに

「だから努力の方法を変えたいんだ。今までは睡眠時間やバイトを減らしてエーラと会う時間を長くしていた。でもそのままじゃ違うんだ。もっと他にできることがあるはずなんだ。それを考えたいって言いたいんだ」

今度はエーラが黙ってしまった。
僕は

「エーラも一緒に考えてくれない?僕1人じゃうまく考えられない」

エーラは沈黙したままだった。

僕はエーラにまた甘えてしまっているのか?いや違うはずだ。
これは2人の問題のはずだ。
そう自分に言い聞かせ、エーラからの返事を待った。
長い沈黙を破ってエーラが喋った。

「・・・いいわ。タナの言う通りにしてあげる。ただ毎日会う時間を作って。会えない日は耐えられないわ。できるでしょ?」

エーラはわかってくれた!そういうことなんだ。
会うのは時間じゃない。
どう会うかなんだ。
それを伝えるのにこれ程時間がかかるとは思ってもみなかった。
やっと僕の言いたいことが伝わった気がした。

次に続く・・・