VRがやりたい!#3(メタバース連載小説)
葵シュセツ
チュートリアルワールドって?
ついに手に入れたVRゴーグルを抱えてアパートに戻ってきた。これでVRの世界に入れると思うとワクワクが止まらなかった。高鳴る鼓動を押さえながら箱からVRゴーグルを取り出した。ついにTMRWにも入れるんだ。早速起動してみた。
すると、何やら初期設定画面らしきものが出てきた。とりあえず、説明書を見てみるか…。説明書は全て英語で書いてあった…。う~ん、全く読めん。もう一度VRゴーグルの中の画面を覗いてみた。よく見ると、登録のためのメールアドレスとパスワードが必要のようだった。メールアドレスとパスワードを入力して待ってみた。
しばらくの間、画面はローディング状態のようになった。焦らされているような気分で待っていると、今度はユーザーネーム?と出てきた。しばらく考えて、好きなビールの銘柄にすることにした。するとローディング画面になり、ついに初期設定の終わりが告げられた。
やった!これでTMRWに入れる!
突然画面が切り替わり、ついに、待ち望んだ、希望に満ちたTMRWの世界に入ることができる!と少しの興奮と少しの不安を抱いたままホームに飛ぶのを待っていた。画面が切り替わって、ホームらしき場所に到着した。おぉ!これがTMRWの世界か!狭い島のような中に現れた自分を感じて少しの興奮は大いなる興奮へと変わった。
少し、少しだけ落ち着いたところで我に返り、ふと思った。これからどうすればいいんだ?ホームにはいくつかのワールドが表示されていた。そこに入ってみればいいのか?どこに行こうかなと思案していると、チュートリアルワールド、と書いてあるワールドを見つけた。なるほど、ここに入れば、TMRWのいろはがわかるかもしれない。そう思ってほんの軽い気持ちで飛び込んでみた。
どんなワールドだろう。期待に胸膨らませそのワールドにジョインするのを待った。画面が切り替わり、広い部屋のようなワールドに到着した。
そこはいろいろなアバターが思い思いに動いていて、会話や笑い声が響いていた。ただ、飛び交っている言葉は全て英語だった…。
どういうことだ?日本人は、日本人はいないのか?オロオロしていると何やら話しかけられた。もちろん英語で。一瞬でパニックになってバタバタとそのワールドから去り、ホームに戻った。
ビックリしたー。どんなところに行ってしまったんだ…。放心状態で立ちすくんでしまった。どこに行けば日本人に会えるのだろう…。一度VRゴーグルを外して調べてみるか。もう怖い思いはしたくないのでここは慎重に事を進めようと思った。
調べてみると、日本人の初心者が行くべきワールドとして、日本人専用のチュートリアルワールドがあることがわかった。なんだ、行くところが見つかったじゃないか!すぐにVRゴーグルを被ってそのワールドを検索した。
日本人向けチュートリアルワールドはすぐに見つかった。よし。今度は大丈夫だろう。不安はあったが早くTMRWを楽しみたい気持ちは抑えきれなかった。すぐにそのワールドに飛び込んでいった。
そこは、日本語で書かれた案内が標されているワールドだった。何人かのアバターがいて、聞こえてくるのも今度は日本語だけだった。やった!やっと日本語で話せるワールドに来た!ホッと胸をなでおろし、表示に従って、そのワールドを歩いて行った。
表示に沿ってTMRWの世界でのいろいろな操作方法が書いてあった。ほー。こういうこともできるのか。ふむふむと感心しながら標示を読んでいると、「こんばんは!」と後ろから話しかけられた。現実の世界のように後ろから声が聞こえる!その事にまず驚き、ゆっくり振り返った。
「おっ!?ビジターさん?TMRWは始めたばかりですか?」
その美少女アバターは気さくに話しかけてきた。
やっと話ができる!緊張とともに返事をした。
「あ、こんばんは。TMRWは今日始めたばかりで…。何をしたらいいかわからなくてこのチュートリアルワールドにたどり着きました…」
思ったより緊張するなあ。少しうわずったような声で返事を返した。
「そうなんですね~。まだわからないことだらけで大変でしょう?よかったら案内しましょうか?」
その美少女アバターは親切にも案内をかってでてくれた。これは渡りに船だ!話し相手もしてくれるし、TMRWのことも教えてもらえる。こんないい話はない!
「いいんですか?まだ何をすればいいかわからなくて…。案内をお願いできますか?」
するとその美少女アバターはにっこり笑って答えてくれた。アバターにもいろんな表情があるんだ~。その事にも驚いた。
「このワールドのことならだいたい案内できますよ。一緒に回りましょう!」
「はい!よろしくお願いします!」
日本語で会話できることと、日本語で表記してあることにすっかり安心し、そのワールドを案内してもらうことにした。 これでTMRWの沼に片足をつっこんだことになるのだろう。親切な世界だなとすっかり安心した俺はワクワクが止まらなかった。これからもっと楽しいことが待っているはずだとしか考えられず、これならTMRWと仲良くやっていけそうだと感じていた。あー、楽しみだ!TMRWは優しくハグをし、迎え入れてくれた。
次に続く・・・