青色の向こう #6(メタバース連載小説)
葵シュセツ
『紫』
「いるわよ」
「えっ?」
僕の思考は一瞬停止した。再び動き出した思考は色々なことを僕に想像させた。
お砂糖がいる?
そんな中僕と会っている時間はあるのか?
お砂糖の人はこの状況を知っているのか?
そもそもどんな人なんだ?
これからは会えなくなるのか?
聞かなかった方が良かったのか?
エーラと僕の関係はどうなるのか?
頭がフル回転して言葉が出てこなくなった。するとエーラは初めて視線を外して喋った。
「でも最近は会ってないの。会いに行ってないの」
どういうことだ?
僕はますます混乱した。
エーラは忙しいのか?
そんな中なぜ僕と会ってくれているんだ?
そんな僕の心をまた見透かしたようにエーラは話した。
「でもタナは別。私も会いたかったわ」
今度はしっかりと僕の方を見つめてエーラは言った。
エーラは一体どういうつもりなのだろう。頭の中を落ち着いて整理しないと話がわからなくなってしまった。
「また明日も会えるわよね?」
そう言われてまた驚いてしまった。
エーラに会えるのは嬉しいがお砂糖の存在が気になる。
問い詰めることもできず、僕は会えるよと返事をしてしまった。
「もうこんな時間だわ。また明日会いましょう」
「えっ?あぁ、そうだね。また明日」
そう言ってお互いログアウトしていった。
ヘッドセットを取って思わず、フーッと息継ぎをした。
エーラの気持ちがわからない。
わかったのはエーラも僕に会いたいということだけだ。
それはお砂糖の存在が霞むほど嬉しいことだった。
また明日もエーラと会える。その事だけがやけに胸を躍らせ、心に残った。浮かれた心を抱いたまま僕は眠りについた。
そして次の日。
午後8時頃僕はログインした。
ログインしてすぐにエーラからインバイトが来た。
僕が来るのを待っていてくれたのだろうか?
昨日の混乱も忘れて僕はエーラに会いに行った。
「こんばんはタナ」
「こんばんはエーラ」
今日のエーラは昨日に比べちょっと距離を感じさせる挨拶だった。
僕は何だか拍子抜けしてしまった。
昨日のことがあるだけに、それなりの緊張感を持ってエーラと会ったのだが、そのエーラはやけに落ち着いた様子で僕は戸惑った。
「エーラ昨日はよく眠れた?」
などと機嫌を取るように話しかけた。
「変わりないわ。いつも通りよ」
と素っ気ない返事が返ってきた。
相変わらずつかみ所がない話し方だなと思いながら僕は次の話題を話しあぐねていた。
するとエーラが唐突に言った。
「お砂糖とは別れてきたわ」
僕は急な展開にあっけにとられてしまった。